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コラム

企業法務

破産のタイミング、弁護士相談のタイミング

弁護士に依頼するタイミング

東京都でJR各線に載っていると、ときどき、銀行の広告動画がでてきます。

決算書が悪くて、銀行からの融資を諦めているそこの社長さん、ウチの銀行なら、決算書の内容が悪くても、不動産担保で金貸します!不動産は、会社名義じゃなくて社長の個人名義でも、親族名義でもOKです!ご相談ください!なんていう広告ですね。

こういうのを見て、おお、自分の会社でも融資を受けられるのか!とお思いなる経営者さんもいるのでしょう。しかし、ちょっと待ってください。

社長の個人名義の不動産を担保に取るということは、いざとなれば、社長の御自宅、お子さんやご家族が住んでいる自宅を競売にかけ、出ていかせる、ということです。ご親族の名義の不動産も担保に取る、ということは、同じくいざとなれば、社長の高齢の親御さんや、奥さんの親御さんが住んでいる自宅も競売にかけ、出ていかせる、ということです。

他の銀行では貸さない案件でも、自分のとこなら貸せます、というのは、ある意味、①他行うよりも金利が高いか、②いざというとき、つまり返済遅滞に陥ったときには、他行よりもえげつない回収手段で回収する、ということです。

破産の時に、子どもや親、または配偶者やその家族が追い立てを食う、ということは、社長は破産のときに、会社、資産はもとより、家族関係、人間関係までも一気に失う、ことになりかねません。一番苦しい時に、支えてくれる人が全くいなくなってしまう。これは、物凄く、精神的につらいことです。
そもそも「計算書が悪いのに貸す。不動産を担保に取れればいい」という発想は、毎月の定期的な返済は、もはや、アテにしていない、いざというときに不動産は全部容赦なくうっぱっらって回収すればいい、という考えかたが背景にないと、でてきません。

なので、まあ、鬼のような金融機関だなあ、と、この手の広告を見るたびに思います。しかし、まあ、こういう広告を出すということは、ここまで深く考えずに、家族名義の不動産まで担保に取られようが、なにしようが、ともかく、カネさえ貸してくれれば。。。!!当座がしのげれば。。。。!!となって、飛びついてしまう社長さんがおおいのでしょう。
苦しくなって、判断力が鈍る、目先に飛びつく、気持ちはよくわかります。しかし、本当であれば、そこまで追い込まれる前に、このまま事業を続けていけるのか、やめるのか、譲渡するのか、あるいは、方向転換するのか、大幅に縮小するのか、よくよく、考えておくべきなのです。

いざとなったら、破産すればいい、という方もいます。しかし、その、ほんとの「いざというとき」には、もう、追い詰められすぎて、破産さえできないという人も多いんです。
破産って、そんな簡単な話ではありません。会社など、法人の破産ですと、裁判所に納める予納金の金額が高い。借金額が多額になり、債権者が増えれば増えるほど、予納金は高くなります。これってつまり、苦しくなれば苦しくなるほど、破産するにもハードルが上がるってことなんです。

加えて、弁護士費用ももちろん掛かります。生きて動いている会社を破産させる場合、100万以上になってしまうことも少なくはありません。それに加えてたいていの場合、会社代表者、つまり社長本人の破産も必要になるので、その費用も掛かります。文字通り、地獄の沙汰も金次第で、これがないと破産さえできない。

また、破産申し立てのための手続きには、体力、精神力も必要です。帳簿などいろいろなものを準備して弁護士に説明しなければなりませんし、従業員や取引先に、実は破産する、とつたえるのも相当精神力のいることです。社長が参ってしまって、飯も食えない、夜も寝られない、となってしまってからでは難しい。

ですので、事業が苦しい方、破産、という文字も頭をよぎるような状態の方に、これだけはお伝えしたいのです。いざって時は破産すればいい、じゃないんです。破産するにもカネもかかる、精神力も体力も、時間もかかるんです。
そういうときに、家族名義の不動産まで取り立てられたら、そばにいて支えてくれる人もいなくなります。
なので、そこまで追い詰められる前、が、破産を決断するタイミングです。そのタイミングで一度、弁護士に相談してみてください。よくよく、お考え下さい。それがご自身のためであり、またご家族のためでもあります。破産が本当に地獄になるか、まだ、ゆるやかなものになるかは、それで決まります。

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